弱点はネイルの下
アキレスのかかとや弁慶の泣き所のように、神話や歴史に出てくる強者にも、弱点がある。私はそもそも強者ではないので、弱点は無数にあるのだが、実は身体的な弱点のひとつを、ジェルネイルの下に隠している。
ハイポニキウム(爪下皮)と呼ばれる、爪と指の間にある皮膚が、それである。この爪と指の間の皮が、どういうわけか人よりちょっと長いのである。その結果、あまり短く爪を切ることが出来ない。(ちなみに、指の先のこの皮膚に、「ハイポニキウム」などという名前がついていることを知ったのは、ごくごく最近である。)ハイポニキウムには神経が通っているので、切ると痛いし大変に気持ち悪い。うっかり傷つけると、治るまでとにかく指先が気になってしまう。
そんな私にとって、ジェルネイルは弱点をかばう強い味方である。ジェルで硬くなった爪は私のハイポニキウムもしっかり守ってくれるし、長い爪も割れにくくしてくれる。おまけに指もキレイに長く見せてくれる。良いことばかりじゃないか。
しかし、である。ジェルネイルで保護し始めたら、なんと私のハイポニキウムは成長してさらに長くなってしまった。
自分の苦手を、避けたり、バレないように隠したりしていたら、余計に苦手になってしまうパターンか。
運動が苦手 → 運動しない → より運動が苦手になる+人前で恥をかきたくない → 運動出来ない のように。
いやいやだって、ハイポニキウムは切ると痛い、神経の通った皮膚なんだよ。切れるわけないじゃん!と思うのだが。
発達凸凹さん達の不注意とか、こだわりとかと、似ているかもと思う。産まれつきだし、脳神経の個性だから、仕方ないし、別に悪くない。でも不便ではある。だから、本人も周囲も、暮らしやすいように、環境を整えたり、練習したりする。
私にとってのジェルネイルは、環境調整なのか否か・・・ 必要な練習とは何なのか・・・ はて?
この夏、私の10本の指の爪は夕張メロンのような淡いオレンジ色をしている。ぷっくりと丸みを帯びたジェルネイルは、つやつやして飴玉のようでもある。
ふとしたときに指先が視界に入ると、ちょっと嬉しくなる。弱点を隠しているのに、誰にもそんなことは気づかれない。それどころか「いい色ですね」とポジティブな言葉がけをもらうこともある。今のところ、大変にうまく隠せている。
これを読んでくれているあなたにも弱点はあるだろうか。その弱点を庇ってバランスを取るうちに発達した強みもあるかもしれないが、弱点を隠すことに違和感や疲れを感じたら、ちょっと人に相談してみる、というのもありかも知れない。
(M.C)
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