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冬来たりなば春遠からじ


 園芸好きの皆さま、待ちに待った秋です。このところ園芸日和が続いていますが、いかがお過ごしですか。

 秋といえば種まき派にとってにわかに忙しくなる時期である。種をまき、発芽して、すくすく育ってくるときのワクワク感はたまらない。わたしは今年、去年に引き続いてネモフィラとスイートピーに加えて、初めてビオラとパンジーも播くことにした。すべて、春に咲く花々である。

秋にまいた種は冬の間、寒さの中でじっと身をひそめ、霜に耐え、少しずつ根を張っていく。春に種をまいて夏に向かって育ちゆく草花のエネルギッシュな感じも元気が出るけれど、カウンセリングの場で人と向き合っていると、この秋まきの花たちの姿がふと重なることがある。

悲しみや不安の中にいる人の心は、まるで冬を前にした小さな芽のようだ。外から見れば動きがないように見えても、その人の内側では、確かに何かが始まっている。傷ついた言葉や忘れてしまいたい記憶を抱えながらも、自分を取り戻すために、静かに根を張っているのだ。

カウンセリングで何が変わるのか、というのは多くの方が疑問に思うことだと思う。
実はカウンセリングを受けてみようと思った時点で、静かな変化は始まっている。変化はいつも静かなところから始まるのだ。
花が咲く前に、見えない土の下で命が動いているように、心の回復もまた、目には見えないところで進んでいく。その静かな変化を共に待ち、その様子を共に見つめる存在が、我々カウンセラーなのだと思う。

冬来たりなば春遠からじ――
寒さの中にも、希望は息づいている。
待つことにも意味はある。
急がず、焦らず、自分の歩幅で。
今はただ、根を張る時間を大切に。

春に咲く花々の美しさがことさらに眩しいのは、私たちにそんなことを力強く伝えてくれるからなのかもしれない。

 花が咲いたら、みこと心理臨床処にも持っていく心づもりでいる。冬を越えて咲いた花たちが、訪れる方々の目を楽しませてくれたらと思う。
(C.N)


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