夫婦、この不思議なもの
夫婦という関係は、本当に不思議なものだと思います。
家族のようでいて、友達のようでいて、他人でもある。どれだけ長い時間を共に過ごしても、完全に分かり合えるわけではありません。けれど、なぜか一緒にいる。そういう不思議さを、臨床の現場でも何度も目にしてきました。
夫婦は、単なる「生活の共同体」ではありません。二人の心の奥にある、過去の記憶や願い、寂しさ、癒されなかった思い——そうした“心のかけら”が交わる場所でもあります。
たとえば、相手の何気ない一言に強く腹が立つとき。その怒りの中には、実は「昔の自分が傷ついた記憶」や「本当はわかってほしかった思い」が潜んでいることがよくあります。相手が悪いわけではなく、あなた自身の心の奥の古い痛みが刺激されているのです。
私たちカウンセラーの言葉で言えば、夫婦関係は「お互いの無意識が触れ合う関係」の一つと言えます。相手を通して自分を知る、つまり相手は自分の鏡になり得るということです。
だからこそ、夫婦関係をよくする第一歩は、相手を変えようとすることではなく、自分の心の動きを見つめ直すことだと言えます。なぜ自分はイライラするのか、なぜ寂しいのか——その理由を少しずつ言葉にしていくと、不思議と相手への理解も深まっていきます。
もちろん、どれだけ心を尽くしても、分かり合えないこともあります。でも、完全に理解し合えなくても「わからないまま、そばにいる」ことができる関係もまた、ひとつの成熟の形なのではないでしょうか。
夫婦は、互いの完璧な理解者でなくてもいい。分かり合えないことを抱えながら、それでも共に生きていく。
その不完全さの中に、あたたかい人間らしさが宿っているように感じます。
夫婦生活とは「他者を通して自分を知る旅」であり「分かり合えなさを抱えながら、それでもつながりを選び続ける壮大な実験」と言えないでしょうか?
私たちは、夫婦や家族という“人と人との関係”の中で生まれる悩みや行き違いに、丁寧に寄り添うことを大切にしています。
誰かと生きるということは、喜びと同じくらい、戸惑いやすれ違いを抱えることでもあります。けれど、その戸惑いの中にこそ、理解や成長の芽が隠れているのかもしれません。
どんな関係も、ときに曇り空のような時期を通ります。けれど、ゆっくりと心を見つめ直していくうちに、また小さな光が差し込んできます。
みこと心理臨床処では、夫婦や家族の関係にまつわる悩みを、安心の中でともにほどき、再び歩み出せるようお手伝いしています。
(C.N)
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